「ホタテ屋は自分の天職であり、使命」 専務取締役 君ケ洞 剛一

「ホタテ屋は自分の天職であり、使命」 専務取締役 君ケ洞 剛一

ヤマキイチ商店 専務取締役 君ケ洞 剛一

君ケ洞幸輝代表取締社長、君ケ洞 剛一専務、君ケ洞 秀綱常務、君ケ洞京子がヤマキイチ商店の泳ぐホタテにかける想い、そしてお客様への感謝の気持ちをお伝えいたします。

第2回は専務取締役 君ケ洞 剛一のロングインタビューです。

子供心に褒められたいなと思いながら手伝いをしていました(笑)

2001年に大学卒業後、百貨店に勤務して、2007年に家業を継ぐべくヤマキイチ商店に入社しました。長男ですので、家業を継ぐことは決めていましたが、一度は地元を離れて外の世界に触れた方がいいと思っていました。
子供の頃から家業を手伝っていましたので、入社当時は仕事への戸惑いや迷いはなかったです。
子供の頃は親父の顔を伺いながらの手伝いでしたが、子供心に褒められたいなとか思いながら手伝いをしていました(笑)。中学時代は自分がどういう流れで仕事をすればスムーズに業務が出来るだろうとか、ちょっとでも親父の手助けになればいいなと考えながら仕事をしていました。親父は子供でも容赦なくとにかく厳しかったです(笑)。

お客様から喜んでもらえるっていうのが一番の醍醐味ですよね。

百貨店勤務時代は、商売柄売上げ第一です。数字を求められる仕事でした。いいか悪いかという問題ではなく、企業であればそれは当然のことです。
百貨店勤務の後、家業を継いでお客様と接したり、話をしたりすると自分が本能的に嬉しいって感じるのは、お客様に喜んで貰うのが一番嬉しいんですよね。そのことを改めて感じました。
お客様に喜んでもらったり感謝されたりすると、たまらない気持ちになるんですよ。だからこそ、商品には妥協無くやらないといけませんし、そこが根本です。そこを大事にしていると自然とお客様が応援してくれますし、信頼してくれます。
やっぱり当社はお客様に育てていただいているんだなって思います。お客様から喜んでもらえるっていうのが一番の醍醐味ですよね。

震災をきっかけに始めたブログ。たくさんの励ましの声とご縁をいただきました。

震災があってから、お客様からの無償の愛を感じます。本当に感謝しています。お手紙やお電話で励ましの声をたくさんいただきました。本当にありがたかったです。
震災でイケスや加工場、自宅を流されました。
親父は絶対に再建すると言っていましたし、私もそのつもりでした。
ただ、イケスや加工場の再建、そしてホタテが震災前の状態になるのか全く見えていない状況でしたので、2,3年は商売が出来なくなるとは考えていました。でもまた、ゼロからやればいいですし、私が震災前からも取り組んでいた漁師さん達や地域全体が潤う仕組み作りを、しっかり腰を据えてやっていく時間にあてようと考えていました。だから仕事に対する不安は全くありませんでした。

お客様に元気に頑張ってますということを少しでも伝えたいという想いから、2011年6月からブログを始めました(あるべき姿に|三陸釜石泳ぐホタテ屋の二代目)。ブログは始めてでしたので、試行錯誤でしたが、毎日更新することを目標に今まで休むことなく毎日ブログを書いています。飽きっぽい自分が毎日やってこれたことを褒めてあげたいです。誰も褒めてくれませんので(笑)。

暑苦しいブログだと友人からは言われていますが(笑)、ブログのおかげで様々な方との出会いがありました。釜石の若手経営者を始め、全国各地の方が応援メッセージや励ましのお手紙をいただきました。ネットの力を実感しましたし、こんなにも暖かい方々が全国各地にいらっしゃるのかと思うと感謝の気持ちでいっぱいです。

結局は人と人とのご縁やつながりが一番だと思いますし、この出会いは私の宝です。皆様の声にお応えできることは、いい商品をお届けすることだけだと思っています。 

ヤマキイチ商店だからこそ出来ることを突き詰めていきたい。

当社は生産側と消費者側を結ぶ立ち位置にいます。一般的には水産卸会社になるわけですが、商品を右から左に流すのではなく、生産者である漁師さん達、消費者であるお客様に対して、責任があるということを強く心にとめておかないといけません。

漁師さんに対しては、最高のホタテを育ててくれた労力に見合う対価を、そしてお客様には、最高のホタテで笑顔になっていただくこと。当社は大手企業に比べると、微力かもしれませんが、ヤマキイチ商店だからこそ出来ることがあると信じています。

今は1次産業が2次も3次も手がけていく6次産業が注目されていて成功事例も出てきていますが、本来であれば一次産業の方が6次産業をする必要はないわけです。
消費者側は自分達が食べているものが誰が作ったものなのか、また安心して食べていいものなのかを確認したいというニーズがあるわけですよね。また生産者側は自分達が苦労して作ったものが市場で正当に評価され、それに見合う収入が確保できればいいわけです。

しかし現状では、消費者は本当に安心して食べていいものなのかが見えず、また生産者は安く買いたたかれ、苦労に見合う収入を確保できていない現状があるわけです。そういった負の部分からやむにやまれず6次産業というものに手を出すのが、本当の意味での6次産業と言えるのでしょうか。

例えば、当社が付き合っている漁師さん達は本当に手間暇かけてホタテを育てているんです。その方達が加工して、販売まで手をかける時間はないわけです。逆もしかりで当社がホタテを選別して、いいホタテをお客様にお届けしている中で、生産側に入っていったとしたら、どちらかが疎かになってしまうのは目に見えています。

極論で例えると、最高級のホタテが海からあがり、漁師から直送されたホタテを家庭で料理するというのもひとつの形だと思います。
6次産業の視点で見ると2次加工して、付加価値つけて販売して、最後は料理人として包丁を握るんですかって話になってしまいます。
ホタテを生産する人、加工する人、販売する人、料理をする人など、それぞれの道を極めた人達がいて、その道のプロがうまく協力していくことで、お客様が最高に喜んでいただけるものが提供できると思うのです。

そうなるためには、脇目を振らずに各分野で突き抜けていくってことが大事なのではないかと思いますし、6次産業化を考える前に今の仕組みのうまくいっていない部分を精査、改善していき、各分野のプロが本領を発揮できるような状況になって始めて、1次、2次、3次の6次産業をやるよりも所得はあがると私は思ってます。

ホタテ屋は私の転職。生産者と消費者のつなぎ役の使命があります。

自分がやっていることは天職だと思っていますし、各分野のプロが天職だと胸をはって言えるような環境をつくっていきたいです。

そのためには、漁師さん達もお客様に商品がどう届き、どう食べられているのかということを知ることが大事だと思うんです。当社は生産者と消費者をつなぐ位置にいます。漁師さんのこともわかるし、お客様のこともわかります。私たちは販売という役目だけでなく、生産者と消費者のつなぎ役として働きかけをしていく義務というか使命があると考えています。

岩手県の主産業は農業、林業、水産業の一次産業です。
しかし一次産業の方々の苦労が報われていないというか。親の背中を見て、この仕事には就きたくないという環境は未来がないと思うのです。一次産業が誇りをもって仕事をしていくには、自分がやっている仕事、使命感が大切だと思います。

私たちもお客様から気付かされることがたくさんあります。漁師さんも同じだと思います。自分達の仕事が世の中のためにどう役に立っているのか。そこがわかれば、もっと楽しんで、誇りを持って仕事ができます。結果的に自然と物作りに励む体制になっていくと思うんです。

ただ現状では、ホタテを育てても市場で買いたたかれるから、単に水揚げだけしていればいいとか、そういった仕組みになっている部分もあるわけです。
それは「意識改革が大事!」って言って仕組みを変えればいいとか言われますし、それが一番なんでしょうけど、実はそれが一番難しいと思うんです。

やらされているうちは何をやってもダメなんです。それはどの業種でも一緒だと思います。
あるきっかけがあって、自ら気付いて自分から率先してやるような大きなきっかけが人間には必要だと思うんです。そのきっかけが消費者と漁師さんの距離をもっと近くにすること、お客様が喜んでくれる姿をイメージできるような体制を整えること。それが出来るのが私たちだと思っています。そういった形にしていきたいと考えています。

関わっているもの同士が協力していかないと、意識改革って難しい思うんです。

そういうことを考えながら、仕事をしていると色々なことが見えてきますし、気づきも多くなります。例えば漁師さんやその家族をレストランに連れて行って、自分達が育てたホタテがどう調理されているのかとか体験することができたら、意識も変わると思いますし、家族も誇りに思うはずです。それは一次産業の方が新しい気づきを得るにはどうすればいいんだろうとか、どうやった所得向上に結びつくんだろうといったことを常に頭の中に意識しておくと、誰かに出会った時やそう言う場に遭遇した時に、「こういうことをしたら漁師さんが喜ぶんじゃないか」ってアイデアが浮かんでくるんです。

意識改革も大事ですけど、それを漁師さん自身が考えなさいというのは傲慢な考えだと思います。関わっているもの同士が協力していかないと、意識改革って難しいと思うんです。

それにはそれぞれが仕事に対して使命感を持つことだと思います。私たちは生かされているわけですから。使命感を持って、誰かのために役に立ちたいってことを自覚し、実感して行動していけば誇りに繋がります。そうすることで、関わっている全ての人達にありがとうっていう感謝の気持ちが芽生えてくると思うんです。

漁師さん達にいいホタテをつくっていただくことが絶対条件。

単に水揚げして、市場に卸してだけという感じだと消費者の顔が見えるはずがありません。食卓に並んで、笑顔になっている顔がイメージできないはずです。より大きいホタテを、より美味しいものを届けたいっていう使命感が当社にはあります。

当社と同じ使命感をもって、仕事に取り組んでいる漁師や浜のホタテは他とはあきらかに違います。そういった浜があることは幸せですが、現状に甘えるとホタテの品質に影響がでます。ホタテは正直です。

私たちも現状に甘えることは許されません。お客様の好意に甘えて、対応を疎かにしていたら、それは裏切り行為です。お客様も正直です。
私たちの使命はお客様に心から喜んでもらうことです。それを突き詰めていくと、やっぱり一次産業の方々、漁師さん達にいいホタテをつくっていただくことが絶対条件なんです。

漁師さんはいい物を作る。そこで苦労に見合った所得があれば本当の意味での役割分担になるんです。そうなれば、漁師さんは常にいい物を作ろうと頑張れる。誇りを持って仕事をする親の背中を見ながら育った子供は後を継ごうと考える。家族も誇りを持って生活することができる。大事な海や自然を守ろうとする。そういったことがそこかしこで生まれることで、ふるさとが元気になる。そう考えると一次産業は地域発展の核だと思うのです。だからそういう環境が整ってくれば最高だと思います。

搾取される構造を変えていくのは「誇り」を持つこと。

そうした考えに辿り着いたのは、両親や亡くなったばあちゃんを含めた家族のおかげですし、お客様、そして周りにいる方々が気付かせてくれたと思っています。
最近、近江商人の「三方良し」という格言を聞いて、その通りだなって感じます。
欧米だと買い手と売り手のWIN-WINですけど三方良しは、買い手と売り手に加えて、「世間良し」の3つになります。ある意味日本的な素晴らしい考えだなと思います。
自分達だけが良くなると考えが狭くなりますし、自分の利益のみを追求すると、最終的には自分が苦しくなってくるはずです。だからみんなに感謝されながら、仕事に向き合ったほうが気持ちいいですしね。

岩手県をはじめとした東北地方は、震災前から経済的にも産業的にも厳しい状況でした。震災があろうがなかろうが、搾取される構造が変わらなければ地方は衰退していくばかりです。その構造を変える大きな力は「誇り」だと思います。震災をきっかけにふるさとを見つめ直す人が増えてきたように感じます。

自分の仕事にプライドを持ったり、自分の地域に感謝する気持ちが大切です。感謝することが誇りを生むことになりますからね。
この景観とかすごく素晴らしいところに生まれたんだなって思いますし、周りの人は暖かいですしね。やっぱりそういう当たり前だと思っていたことに感謝していくことが大事だと思います。

若い方は地元を出る人が多いですけど、離れてわかる良さもありますしね。外にいる方からの暖かい声や励ましは新しい気づきを与えてくれます。
ここにずっと住んでる人だって、「これが当たり前の環境じゃない、恵まれているんだ」ということがわかると思うんです。

漁師さんやその家族の皆さんには、自分が作ったホタテが誰かの喜びに繋がっていることを直接感じて欲しい。

人はないものねだりをすることが多いじゃないですか。自分にはあれがない、これがないとか。そうではなくて、自分にあるものを大切にしていくことが必要かなって思います。
それは自分自身がブランドだということに気付きます。何度も言いますが、それは、この場所で生まれ育ったことへの誇りの気持ちなんです。
釜石市民だったり沿岸に住んでる人だったり、岩手県人だったり、東北人だったり、それがブランドっていうか。今でもブランドになってると思うんですけど。すごく謙虚だし、真面目だし、愚直だし。そういう人が多いですしね。その気質は守りつつ、そこに住むっていうことは経済的にも精神的にも豊かになっていかないといけないって感じます。

新しい取組みとして素敵な飲食店の皆様と繋がる機会を頂きました。素敵な空間や素晴らしい料理、シェフ、スタッフ皆様のおもてなしなどを体験することができました。私が体験した素晴らしい時間を、第一次産業者の方にも体験して頂きたいと思うようになりました。
例えば当店がホタテを仕入れさせて頂いている浜の漁師さん家族と一緒に訪れたいという想いが強くなっております。

名店と名高いお店で当店のホタテが使われるのは、とても嬉しいです。一流の料理人が認めてくれたのですから。当店のホタテというよりは釜石、そして岩手の生産者が誇りに思っていいと思います。しかしこれは私達の力だけではないんです。つないでくれた方々、一生懸命ホタテを育ててくれた漁師さん、そしてこれまで私たちを応援してくれ、信頼していただいたお客様ひとりひとりのおかげです。全ての方に感謝しています。

漁師さんやその家族の皆さんには、自分が作ったホタテが誰かの喜びに繋がっていることを直接感じて欲しいのです。そして漁師さんのご家族にも一緒に感じて欲しいのです。そのことが仕事をする上での大きな誇りになると思っております。そうした積み重ねが、地域に誇りと愛着を持てるようになることで、次世代を担う子ども達の大きな力になると信じています。

泳ぐホタテの詳しい内容・ご注文は「泳ぐホタテ 商品紹介」をご覧下さい。

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